ALC探訪

寒冷な風土に建つALCパネル

 ALCパネルは、高度な品質管理のもとで工場生産される製品です。安定した品質と高い寸法精度が特徴で、外壁・間仕切壁・屋根・床などを構成する材料として、広く使われています。
 ALCパネルが置かれている気候・風土は様々であり、耐久性を保持し、美しく良質な建築物を実現するためには、ALCパネルそれぞれの使われ方に適した仕上げと防水が必要となります。今回は寒冷地仕様の事例を見ながら、凍害対策のポイントをまとめました。

水分を浸透させない

 凍害は寒冷地で使用する建材全般にあてはまる現象です。ALCパネルも例外ではありません。吸水したALCパネルが凍結、融解を繰り返すような条件にさらされると、外装仕上材の浮きといった凍害を受けることがあります。
 対策の基本は、大敵となる水分をALCパネルに浸透させないことです。


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重要なポイントとなる箇所

 ALC建物の設計段階で、寒冷地に見合った納まりや外装仕上材の選択を行うことが凍害を避ける重要なポイントといえます。
 対策を講じるうえで、特に重要な箇所は次の通りです。
①基礎廻り ②サッシ廻り ③換気扇廻り ④換気口廻り ⑤ベランダ廻り ⑥パラペット廻り ⑦軒先廻り ⑧屋外階段 ⑨下屋取合い
⑩貫通梁など

 例えば、基礎廻りでは布基礎の立ち上がりは積雪や屋根からの落雪も想定し、積雪高さよりもできるだけ高くします。布基礎とパネルとの取り合い部には、シーリング処理を確実に施します。
 サッシ廻りでは、パネルへの浸入水の防止のため、サッシの取付けに先立って、腰壁パネルの小口にALCパネルの材質を考慮して選定した防水プライマーを塗布します。サッシの水切り板の出寸法はパネル外面よりも20mm以上確保し、両端に水返しの付いたものを採用して巻垂れやつららを防止します。
 サッシ枠とパネル、内装とパネルの隙間には、それぞれ発泡ウレタンを充填します。窓は二重窓もしくは複層ガラスを使用し、サッシは断熱サッシを推奨しています。


積雪や落雪に備えた基礎

 凍害への備えはいったん対処すれば、それで万全というわけではありません。建物の長寿命化を図るためには、仕上げ材(塗装、パネル間のシーリングなど)の定期的なメンテナンスが必要です。


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 現在では、諸々の対策が実施され、寒冷地でのトラブルを防ぐことが可能になっています。実際、冬の寒さが厳しい北海道、東北、中部、北陸などで、断熱性のあるALCパネルを用いた建築物が数多く建設されています。

 ALC協会発行の「ALCパネルの仕上げおよび防水 第9版」に、仕上げ材の種類と選択の目安および留意点などが記載されています。
 また、日本建築学会編集・発行の「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 21 ALCパネル工事(2018)」には、特殊条件・寒冷地での配慮すべき留意点として、外壁部位別(基礎廻り、サッシ廻りなど)の凍害発生原因と対策が記載されています(P273~278)ので、参考にしてください。
 ALCパネルに関して、詳しくは各メーカーにお問い合わせください。

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